コンテンツツーリズム関連文献


近代観光とコンテンツツーリズム

「近代観光の発達におけるコンテンツツーリズムの萌芽に関する研究」
(2016年3月,コンテンツツーリズム学会『コンテンツツーリズム学会論文集』Vol.3


前近代から現代に至るまでのツーリズムおよびメディアに着目し、近代観光の発達におけるコンテンツツーリズムの萌芽についての検討を試みた。
歴史的に見ると、日本におけるコンテンツツーリズムの起源は歌枕の時代にまで遡ることが出来る。ただ、前近代までの時代においてはツーリズム自体が一般的ではなく、コンテンツツーリズムはさらに限定的なものであった。社会の近代化以降、交通手段およびメディアの発達によって近代観光が成立し、マスツーリズムが全盛となるが、コンテンツツーリズムも育ちつつあった。21世紀に入り、コンテンツツーリズムは観光行動が多様化した現代を象徴するツーリズムの一形態として注目が高まり、現在に至っている。インターネットの活用が特徴的であり、情報の検索・検討はもちろん、情報の発信・共有のためにも積極的に活用されている。
本稿では、20世紀以前の近代観光の中でのコンテンツツーリズムに着目し、中国東北部(旧満洲)に位置するハルビン )を事例として採り上げる。ハルビンは歴史の浅い街であり、伝統的に見るべきものはなく特筆するべき自然景勝もない。しかし、戦前期は小説『ハルピン夜話』の舞台になった街として知られており、異国情緒あふれるエキゾチシズム・エロティシズムいうイメージに基づくテーマ性が観光資源となって、多くの日本人が訪れた。ハルビンは、近代観光におけるコンテンツツーリズムの萌芽が見られる都市であったと見なすことが可能である。


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